花のズッコケ児童会長(シリーズ第十一巻)

 那須正幹作 前川かずお(亡くなられるまで) 高橋信也(それ以降作画として)画  ポプラ社文庫


あらすじ
もうじき児童会長選挙。
立候補者の中に津久田茂がいると知ったハチベエは、他の候補者を立てて津久田茂を阻止しようとします。

その理由はケンカに敗れたこと。
柔道をやっている茂と数人が、神社の境内で一人をよってたかって投げているのを、偶然ハチベエが目撃したのです。
投げられていたのはハチベエの同級生・皆本章。

茂に言わせると道場をサボる章に稽古をつけているだけらしいですが、リンチみたいなものです。


しかし助けに入ったハチベエは、いともあっさり茂に投げ飛ばされてしまいました。
ケンカにかけては自信があったハチベエにとっては悔しすぎる一件です。

そんな相手を児童会長にはできないとハチベエは奮起します。
もちろんハカセやモーちゃんには心のうちは明かさずに。


そしてクラス一の美女、荒井陽子を立候補者に仕立て上げます。


ハカセの提案で、選挙違反にならない事前運動を開始したハチベエたち『陽子ファンクラブ』の面々。

ところが、うまくいきかけた運動が茂を応援する道場のメンバーによって壊されてしまいます。

そして当の本人陽子が、選挙には出たくないと言い出してしまい・・・。



感想
立候補するならいいけど推薦の場合自分の意思ではありません。
ハチベエたち『陽子ファンクラブ』は陽子を応援するといいつつ、それを楽しんで周りだけで盛り上がっている陽子だけ取り残されているような感じになってしまっています。
実際ハチベエは茂を負かすことができるなら誰でも良かったのです。


もちろんそれは茂のほうにも言えていて、ただの学校の児童会長選挙がずいぶん大事になってしまいます。
本当に集団心理というのは結構怖いものです・・・。


今回は陽子を立てる役に回っていたので三人の活躍はさほどではないかもと思っていましたが、そんなことは全くありませんでした。

ハカセはとにかくアイデアが豊富で次々にいろんな案を出します。

モーちゃんは章と話したことで自分なりに熱い闘志を燃やします。

そしてハチベエは・・・。


ラストで、ハチベエが上機嫌で駆け出していく姿はすごくさわやかでした。


弱虫でおとなしくて根性がないという皆川章に私も同情していたので

彼の演説はすごく良かったと思います。


“児童会長になる人はいろんなひとの気持ちがわかるひと、なかでもぼくみたいな気の弱い子、からだの弱い子の味方になってくれるひとがいいんじゃないでしょうか。

勉強のできるひとより勉強のできないひとの悲しみをわかってくれるひと。”


先生という職業も、そうじゃないかなと思います。

上に立つ人はそうであってほしい、と思います。

すごく心に響く言葉でした。



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