ズッコケ山賊修行中(シリーズ第十巻)

 那須正幹作 前川かずお(亡くなられるまで) 高橋信也(それ以降作画として)画  ポプラ社文庫


あらすじ
ハチベエの近所に住む大学生・堀口雅晴と三人は、ドライブ中に変な奴らに連れ去られてしまいます。
連れ去った奴らは山賊のような格好の一族でした。


彼らは土ぐも様という神様を敬い、土ぐも様に仕えて山の中で暮らしているのです。
ハチベエたちをさらったのは、一族の婿にするためでした。


逃げ出そうにも警備が厳重で簡単にはいきません。

しかも堀口さんとは離れているため、なかなかチャンスもめぐってきません。


そんな時お祭りがやってきます。

お祭りでは外の世界の人間たちからの貢物が届き、子供たちも外へ連れて行ってもらいごちそうを食べられるというのです。

三人は逃げ出すならこのときしかないと考えるのですが・・・。



感想
順応性があるというかたくましいですね三人とも。
まあ山賊とはいっても、別に普段は穏やかで優しい普通の人々なので、いつまでもおびえる必要はないのかもしれませんが。
でも私だったらこうはいかないだろうなと思います。


三人だったから(堀口さんも入れると四人)逃げ出そうという強い意志を持ち続けていられたんでしょうね。

正直いくらいい人たちでも、三人が逃げ出したときはほっとしました。


それにしても土ぐも一族は恐ろしいです。

たった百人くらいしかいないのに、外の世界の人間まで味方につけている。

なんだかどこまでいっても逃げ場がない感じが怖かったです。


その反面、土ぐも教はいいですね。

土ぐも様はずっと大昔からこの世のすべてをうらんでいる。
誰も彼もを不幸にしようと呪っているというのです。

だからこの世の不幸のすべては、土ぐも様のせい。

悲しいことや許せないこと辛いことがあったら、全部土ぐも様のせいにすればいい。


誰のせいにもできないこと、誰かのせいにしたからってどうにもならないことばかりです。
でも誰かのせいにすれば気持ちが晴れることもあります。

だからといって周りの人に憤りをぶつければ、ぶつけられた人が傷つきます。

そんなときに土ぐも様に怒りをぶつければ、誰も傷つかないですむのです。

ハカセのセリフを聞いて、なるほどなあと感心してしまいました。


ともあれ終わったとき、もう土ぐも一族は出てこないんだという安堵感でいっぱいになった話でした。



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