消える総生島

 はやみねかおる作 村田四郎画  講談社 青い鳥文庫


あらすじ
冬休み、亜衣、真衣、美衣は、万能財団グループが製作する映画のイメージガールに選ばれ、ロケに出発することに。
そして教授は一人お留守番、のはずだったのに、勝手に無理やり参加をしてしまいます。

ミステリー映画を撮るために向かったロケ地、総生島。

しかしそこで、来たときに使った船が爆破。
おまけに電話線も切られ、完全に島に閉じ込められてしまうのです。
滞在分の食料は貯蔵されているようでしたが・・・。

ひたすらのんきな教授とは違って、亜衣たちは冷静でいられません。
しかし夜に変な物音がしたため、探検に向かった三姉妹は、
「鬼」の仮面をつけた人物によって、眠らされてしまいます。


総生島には、伝説がありました。

昔仲の良い兄弟がいて、兄には角が一本生えていました。
その角を手に入れると幸せになれるという噂が立ち、逃げ回った末に、兄は海に身を投げます。

残った弟も悲しみのあまり海に沈みました。
その後、兄弟は島になりました。
島になった兄弟は、鬼に姿を変え、人々を襲うようになったのです・・・。


その「鬼」が、この島にいるのかもしれない。
そんな恐怖は、鬼からのメッセージによって確実なものになります。

鬼は参加者の一人をいつのまにか連れ去り、
島にあったはずの山も消失していました。

いったいどうやって、
どこに消えてしまったのか?

この中に犯人がいる・・・
それはいったい誰なのか?

高まる緊張感の中、
いくつもの不思議な話が飛び交います。

教授はそれらのデータを集め、
事件のすべてを自分の中で解いてしまいました。


やがて明かされた、この事件の謎解き。

けれども裏に隠された真相は・・・。

名探偵が全てを私たち(読者)に解き明かすとき、
総生島の伝説は、違う形でよみがえったのです・・・。



感想
今回は『閉ざされた空間』という、いかにもミステリーの定番といえる場所でのお話になります。

こういう空間は、とってもワクワクしますね。

といっても、実際危険が及ぶのは嫌いですが
どうやら「鬼」は、亜衣たち参加者に危害を加えるつもりはないようなので安心です。
だからこそ、教授も安心して放置していたのでしょう。

そして相変わらず、教授の推理は冴えています。
特に何もせず、食べ物を食べて本を読み漁っているだけなのに、
話を聞くだけで、推理が完成してしまうのはすごいですね〜・・・。

亜衣たちも、教授が無理やりついてきてくれてむしろ良かったと思います。
どんなときも冷静沈着(というと聞こえはいいですが・・・)で、のんびり構えている人がいるというのは安心できます。


そして・・・物語の真相について、全てを理解して謎解きをする教授の優しさが、
今回もやっぱり光っています。

教授は、事件を解くことは大好きだけど、それを明かすのはもしかしたらそんなに好きではないのかもしれません。
事件の裏に隠された真相は、自分が理解していればそれでいいと思っているのかもしれません。

とりあえず、名探偵はやっぱり今回も名探偵!という感じで、かっこよかったです。

ミステリーのドキドキわくわく(といっては不謹慎な場合が多いけど)も堪能できて、とても満足できました。
結構お気に入りのお話です。



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