亡霊は夜歩く(第二巻)
はやみねかおる作 村田四郎画 講談社 青い鳥文庫
あらすじ
もうじき文化祭。亜衣は文芸部員で、部誌を売ることになっています。ところがその執筆で忙しいのに、クラスの問題児(おまけに文芸部員でもある)の中井麗一(レーチ)が
勝手にクラスの実行委員に立候補し、亜衣をそのアシスタントに任命したのでした。
そんな中、事件は起こります。
さび付いていて、動かなかったはずの学校の時計塔の鐘が、突然鳴った。
この学校にいつからかある四つの「伝説」のうちの一つ、
“時計塔の鐘が鳴るとき人が死ぬ“・・・を表すかのように。
さらに、文芸部の亜衣がよく使っているワープロに、謎の「亡霊(ゴースト)」からのメッセージが。
そのあと、文芸部で四つの伝説を題材にした推理小説を書いていた昔の先輩・・・
彼女は自殺したらしく、
彼女が伝説の生みの親だったこともわかる。
“校庭の魔法円に人が降る”
“夕暮れ時の大イチョウは人を喰う”
“幽霊坂に霧がかかると亡霊がよみがえる”
そして、自殺した先輩の作った伝説が起こり始める・・・。
なぜかデータが消えてしまったフロッピー(亡霊のメッセージが入っていた)。
美衣の部活の先輩の予言。
亡霊からの新たなるメッセージ・・・。
“亡霊(ゴースト)”はいったい誰なのか?
どんな方法で、伝説を起こしているのか?
そしてその目的はいったい何?
すべての謎は、文化祭に解き明かされるのです・・・。
感想
シリーズ二作目です。今回は、教授と同じように頭がキレる、レーチが出てきます。
彼は問題児で野蛮人・・・のように見えるけど、実際は頭がよく、今回の事件でも
なかなか鋭い指摘をしたりしています。そして驚くべきことに、教授(夢水清士郎)を尊敬しているのです。
前回で親しくなった、警察の上越警部も教授を信頼しているようで、
亜衣たち三姉妹以外にも、教授を認めている人はいるようです。もっとも教授は自分が一番自分を信じているので、当然という態度なのですが。
今回の事件は、もどかしくて悲しい気持ちがあふれている感じでした。
だから、不気味な『亡霊(ゴースト)』も恐ろしいというより、悲しい。私もこんな気持ちを感じたことがあったと切なくなりました。
そんな中、教授のマイペースぶりにはほっとさせられます。
今回もすぐに事件の真相を解き明かしてしまう教授。
けれどもそれを明かすのは、先延ばしにします。
教授は、事件の裏に隠された人たちの想いを汲み取り、
事件を明かしておしまい、という風にはしません。そこが教授が真の「名探偵」だと言えるところです。
普段はぼんやりしていて、何もかもをすぐに忘れる子供みたいな教授ですが、
優しく見守っているのです。事件のすべてと、それに関わる人を。
後味が優しいストーリーです・・・。