私のアンネ・フランク(第三巻)
松谷みよ子作 司修画 偕成社
あらすじ
十三歳の誕生日を迎えたゆう子は、お母さんから「アンネの日記」という本と、日記帳をもらいました。
アンネが架空の友達に向けて日記を書いた、というのが気に入ったゆう子は、
早速自分も「アンネ様」と、アンネに向けての日記を書き始めます。しかしアンネが実在した女の子だということは考えず、また、「アンネの日記」も読んではいません。
なぜならゆう子は怖そうなものが大嫌いで、そういう感じのすることからは目を背けてしまうからでした。
一方お母さんの蕗子は、自分の娘がアンネが日記を書き始めた年と同じになったことから、
プレゼントに本と日記帳を贈ったのですが、その後ふと気づきます。自分とアンネも、同い年だということに。
アンネがもし生きていれば自分と同じように母親になっていたのだ、と感じたとき、
蕗子の中でアンネがぐっと近づいた気がしました。
そしてそのあと、彼女は友人と共にアウシュビッツへ旅立ちます。
楽しそうなゆう子の日記と、アンネへと語られる、深い思いの蕗子の日記。
けれども、やがてゆう子の日常に、衝撃的な出来事が降りかかります。
そしてそれは、アンネと全くの無関係ではありませんでした。
また担任の先生は、アウシュビッツの話もしてくれます。
ゆう子は「怖いこと」から目を背けられません。
一方蕗子は、アウシュビッツで、自分の答えを見つけようとします。
アンネ・フランクから向けられた、重い真実。戦争から遠くはなれ、徐々に風化していく気持ち。
これから自分は、どう受け止めて生きていったらいいのか・・・。その答えが見つかったのは、旅の終わりでした。
感想
あの小さかったゆう子が、ついに中学生になりました。
今回直樹はほとんど出てきません。日記というか、『アンネへの手紙』という書き方で話が進んでいきます。
ゆう子の日記と、お母さんの蕗子の日記と交互です。
とても読みやすいつくりになっています。
そして今回は、「アンネ・フランク」がテーマです。
私は初めてこの本を読んだとき、名前くらいしか知りませんでした。
それでもこの本にはいろいろなことが書かれていたので、
アンネだけでなく、ユダヤ人とアウシュビッツについて知ることができました。
恐ろしいことばかりですが、すべて現実なのだと思うともっと恐ろしかったです。
ゆう子の日記はひたすらかわいい感じで、とても楽しそうでほほえましいのですが、
蕗子の日記はものすごく重苦しくて、非常にメリハリがあります。もっともゆう子も後半には戦争について、人種差別について、知っていくことになるのですが・・・。
「面白い」などとは単純に言えない世界ですが、ただ重苦しくて暗いだけの物語では決してありません。
このシリーズすべてに言えるのですが、最後に、進む力を、希望を感じます。現実を受け止め変えていかなくてはいけない、という強い気持ちを感じます。
だから、絶望感では終わらないのです。
そこが、とても好きです。
「アンネの日記」を読んでからこの物語を読むと、より深くこの本に入り込めると思います。
また、この本を読むと「アンネの日記」に興味がわきます。
私もこの本を読んでしばらくして、日記を読みました。