ハリー・ポッターと賢者の石(シリーズ第一巻)
J.K.ローリング作 松岡祐子訳 ダン・シュレシンジャー画 静山社
あらすじ
生まれたばかりの頃に両親を事故で亡くしたハリー・ポッターは、母親の妹(この頃は姉と訳されている)に引き取られて大きくなります。ところがハリーが十一歳になったとき、実はハリーは魔法使いで、両親とも事故ではなく、同じく魔法使いのヴォルデモートに殺されたのだとわかります。
そしてハリー自体、ヴォルデモートが殺そうとして唯一殺されず生き残ったばかりか、ヴォルデモートを消し去った英雄として魔法界では有名だというのです。
ホグワーツ魔法学校に入学することになったハリーは、学校に向かう列車で赤毛でのっぽのロン・ウィーズリーと知り合います。
ロンは七人兄弟で、父親が魔法省(魔法界の役所)に勤めているバリバリの魔法使い一家。
お互いに強い関心を抱いたハリーとロンは仲良くなります。
その一方で、お金持ちの嫌味ったらしいドラコ・マルフォイとは早々に宿敵となります。
彼の父親はかつてヴォルデモートに仕えていて、マルフォイの入った寮スリザリンは、ヴォルデモート他多くの闇の魔法使いを排出した寮として毛嫌いされていました。
また、マグル(魔法使いではない、一般人)出身のハーマイオニー・グレンジャーは、ハリーやロンと同じ寮グリフィンドールへ入った女の子ですが、最初は全く仲がよくありませんでした。
けれどもある事件をキッカケに友好が芽生え、それからは三人で仲良くなります。
そしてハリーには、たった一つ、他の誰にも負けない特技がありました。
それは箒で空を飛ぶことです。
父親譲りのその才能は群を抜き、一年生にしてクィディッチ(魔法界の超人気スポーツ。空を飛んで、ゴールにボールを入れる、バスケットボールとちょっと似ている)の選手に選ばれるほどでした。
ハリーはその中でも一番重要な、シーカーというポジションを務めることになります。
ハリーはすぐにクィディッチの魅力に取り付かれました。
それとは逆に特に苦手なのは「魔法薬」の授業で、先生のスネイプとは相性最悪でした。
会った瞬間から憎まれていると感じていたハリーもまた、スネイプが嫌いになります。
スネイプはスリザリンの寮監をしていてスリザリンの生徒をひいきするため、それ以外の生徒からは嫌われているのですが、特にハリーへの態度はひどいものでした。
そんな中、ハリーは「賢者の石」の存在を知ることになります。
賢者の石は「金」と「不老不死」を得られるというものすごいものです。
その石がもしもヴォルデモートの復活を願う、誰かの手に渡ってしまったら・・・。
ヴォルデモートは消え去ったかに見えました。
しかし、ただ力を失っただけで復活をもくろんでいるのだろう、と考える人はたくさんいます。
そしてもしもそうなら、復活したときまっさきに狙われるのは、他でもないハリーでした。
もちろん復活したらハリーだけではなく、他の魔法使いも同じ道をたどることになります。
石の隠された場所を知ったハリー、ロン、ハーマイオニーは、奪われる危険性を感じ、何とか石を守ろうとするのですが・・・。
感想
「あー、面白かった!!」というのが、私がこの本を読んで最初に思ったことでした。
次の展開が読めず、ハラハラドキドキの物語です。
夢中で読み終わり、二度目からも夢中になれるため、
本当に何回読んでも面白すぎる!!と私は思います。
ハリーは、設定がすごく入りやすいと思います。
いたって普通の、人間の男の子。
だから、魔法界については全くの無知で、何にも知らない。
それは私たち読者と同じです。
だからハリーの気持ちにすぐに入っていけるし、よくわからないことは、ハリー自身もよくわからないのでちゃんと解説してくれます。
この本は一作目なので、本当の初心者ハリーが魔法界について勉強していく、という感じです。
生まれながらに勇者のハリーは魔法界ではとても有名で、うぬぼれ屋ならいい気になってしまうところですが、ハリーは全然そんなことはありません。
ハリーの性格がまっすぐで優しいのは、マグル社会でハリーのことを誰も英雄と思っていない環境で育ったからでもあります。
その点は本当によかったと思いますが、もともとの性質もあるのでしょう。
あれだけいじめられてイラナイモノ呼ばわりされていたら、普通はいじけるか、弱虫になるか、ひねくれるか、常にビクビクおどおどするか、だと思います。
しかしハリーは、勇気があって、優しくて、正義感も強くて、行動派です。
すごくかっこいいです!!
それもただのヒーローじゃなくて、等身大なところが大好きです!
賢者の石は、人間なら誰でもほしがるようなものですが、
ハリーは、その石をただ守ろうとします。
子供の心の純粋さは、本当に何よりも素晴らしいです。
その心と両親の愛が、ハリーを魔王から守ったのだと実感します。
ハリーのキャラクターは言うまでもないですが、ロンやハーマイオニーも本当に魅力たっぷりで、たくさんの人たちがみんな目の前にいるような鮮やかな書かれ方です。
そしてファンタジーならではの、不思議な生き物や、たくさんの素敵な魔法。
読んでいると本当に幸せな気持ちになります。
そしてまた魔法界のスポーツ、クィディッチが面白い!です。
寮別対抗試合が開催されているのですが、手に汗握る白熱した試合は、本当にワクワクしてしまいました。
また次のが早く見たい!
そういう気持ちにさせてくれる、第一作目です。