密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック

 鴨崎暖炉 宝島社


あらすじ
「ねえ、日本で密室殺人が起きたらどうなると思う?」
「何言ってるんだよ。日本で密室殺人が起きたことはないんだぞ」

ーー三年前。
日本で初めての密室殺人が起きた。

被疑者は無罪を勝ち取った。

以後、三年で発生した殺人事件のうち三割が密室殺人という状況が生まれたのだった。


それから三年後。
ミステリが好きな高校二年の葛白香澄(くずしろかすみ)は、
旅行先の『雪白館』で、偶然中学時代の初恋の相手(?)密村漆璃(みつむらしつり)に再会した。

しかしそこで起きた本物の密室殺人。

鮮やかに解き明かす密村漆璃には、実は大きな秘密があり・・・。



感想
ミステリとは読者が一定の基準を持っていないと読みにくいと思います。

登場人物は多くて一致させにくいし、殺人という性質上、グロかったり後味がよくなかったりするからです。

そういうのがだめな人はまず読まなければいいだけなのですが、
私のように「好きだけど苦手」な人は一番、本を選ぶのに苦労します。

しかしこの本は、まるで私のために書いてくれたのでは?と錯覚するほどの親切設計。


登場人物の名前は特徴的でキャラクター付けもわかりやすく、
密室が一つではないため、館についても人物の掘り下げについてもごく自然にできていく。

過去(回想)と現在をおりまぜながら、丁寧に書かれた謎解きをゆっくり読むことができます。


全体的に雰囲気がコミカルで大変読みやすく、『密室を解き明かす』楽しみに特化している作品です。

なので気楽に読めて、すごく楽しめました。

漆璃と香澄の関係も、なかなか緊張感と和みの間の微妙な雰囲気があり、
二人の過去の出来事も大きく引き付けられます。


ちなみに、物語の中で漆璃が『犯人の名前』を香澄に打ち明けたときのセリフ
「だって誰が犯人かなんて、密室の謎に比べたら遥かにどうでもいいことでしょう?」
に笑ってしまいました。

その時の香澄は、漆璃にかわって密室を解き明かす宣言をしたところだったので、
彼女に「本当に謎を解きたいなら、密室以外にかかずらっている時間なんてない」と言われたのです。

確かにその通りですが、それでいいの!?って思ってしまうようなやりとりもいろいろあって、
二人の会話は過去(回想)も現在も楽しかったです。


ラストの雰囲気も情景が浮かぶような素敵なシーンで、読後感もよかったし、
何回も読み返したくなるお気に入りの一冊になりました。



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