小公女

 バーネット作 吉田勝江訳 岩波少年文庫


あらすじ
インドでお金持ちのお父さんと二人暮らしだったセーラは、少し大きくなったので、遠いイギリスの寄宿学校に入ることになりました。

お父さんは、亡くなった妻の分までセーラを愛してかわいがり、何でも好きなものをあたえたがり、
セーラを自由に贅沢させるように寄宿学校の学長ミンチン先生に頼んで去っていきます。

ミンチン先生にとってセーラは、お金を払ってくれる父親がいる限り、取り入っておくに越したことはないお嬢様でした。


ところがお父さんが親友の鉱山事業にお金をつぎ込み、破産して病気になって死んでしまったのです。

その時からセーラはミンチン先生のもとで、奴隷のような扱いを受けながら生活することになってしまいました。


悲しみに沈む暇もなく、苦しい日々を過ごすセーラ。
けれどもセーラはひとりぼっちではありませんでした。

心優しい彼女の周りには、少しではあったけれども、友達や助けてくれる人がいて、
そしてなにより、類まれな空想の力がセーラを守っていたからです。

セーラはその力を使って、つらい出来事や周りにある世界を幸せな夢へと変えていました。


やがて運命は再び、セーラに大きな出会いをもたらします。
それは彼女の未来を変えるほどの出来事でした。



感想
どんな時でも、どんな場所でも自分らしく生きること。

小さなころからセーラは「自分を王女様だと思って行動する」生き方をしていました。

セーラにとっての王女様は、必要としている人に贈り物を授けられる存在です。
上品で誇り高く、慈悲深く優しい・・・それがセーラの理想です。

セーラの態度や行動は、どんな場所にいても、誰に対しても決して変わることはありませんでした。

その優しさが周りの人を助けて、幸せにしていきます。


面倒見がよく頭脳明晰でダンスも上手、そして社交的な生徒をなぜミンチン先生が嫌ったのか。

それはミンチン先生が強い支配欲を持っていたからなのでしょう。

ミンチン先生の支配のもとで、生徒たちは規律を守り従順に過ごします。
誰も彼女には逆らいません。

しかしセーラだけは違いました。

セーラは小さな王女様のようにふるまい、時にミンチン先生を圧倒していたのです。

それが先生のプライドを傷つけ、何としてもセーラを支配しなければ気が済まなかったのでしょう。


どれだけつらいことがあろうと、前を向いて人に優しく接するセーラを見ていると、応援したくなります。

セーラの心が、想像力が、この世界を暖かく素敵なものに変えてくれるから、
このお話を読むと自然と心が優しくなるような気がします。

そしてもっとセーラに幸せになってほしいと強く願ってしまうのです。


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