はてしない物語
ミヒャエル・エンデ作 上田真而子 佐藤真理子訳
ロスヴィタ・クヴァートフリーク画 岩波書店
あらすじ
本好きの少年バスチアンはある日、いじめっ子から逃げて入った本屋で一冊の本を見つけます。
その本のタイトルは『はてしない物語』。
はてしない物語を読むうちに、バスチアンはこの不思議な本の世界“ファンタージェン”へと導かれていきます。
そこで、滅亡間近のファンタージェンを救った英雄となったバスチアンは、なんでも望みがかなう力を手に入れます。
ただしそのかわり、一つの望みと引き換えに、現実世界での記憶を一つ失うことに・・・。
なくなってしまった記憶は、もとから持っていないものと同じ。
バスチアンは、だんだんもとの世界に帰る気を失っていきます。
そしてついには、ファンタージェンを自分の支配下におこうとしてしまうのです・・・。
バスチアンがもとの世界に帰るためには、いくつかの望みが必要で、もしそれを見つけられないうちにすべての記憶を失ってしまったら、二度と帰れない。
ファンタージェンの中で、何も持たない存在として永久にさまようことになるのです。
そのことにようやく気づいたバスチアンは、帰る道をさがすことに。
バスチアンはどうやって帰る方法を見つけられるのでしょうか?
そして、彼がさいごに見つけた望みとは・・・?
感想
このお話は、なんでもない普通の男の子が主人公。現実では、お母さんが亡くなってしまってお父さんと二人暮らし。
そのお父さんとも余り口をきかない。
でぶでのろまで頭もよくなくて話下手で・・・コンプレックスだらけ。
そんな彼が、いきなりファンタージェンでは英雄になってしまう!
まるで夢みたいですね。
そして、そこでは本当にどんな願いもかなってしまうなんて・・・。
ずっとそこにいたくなってしまうのも当然かな、って思う。
前半部分は、はてしない物語を読むバスチアンと、物語がそのまま書かれているので、
本当に自分自身がバスチアンになったように、はてしない物語を読んでいる感覚になれます。
私が好きなのは、バスチアンがファンタージェンに来たばかりの頃と、帰る道をさがすあたりからラストまで。
やっぱり、何でも願いがかなうっていうシチュエーションはいいですね。
読んでいて、バスチアンが本当に幸せそうで、私もとても嬉しくなります。
はてしない物語の最初は、国の滅亡という雰囲気で暗かったけれど、バスチアンがファンタージェンを救ったために、
いきなり世界が幸せに満ち溢れた瞬間だから、というのもあるかもしれません。
そのあとにバスチアンがどんどん変わっていってしまうのは、読んでいて胸が痛かったけれど、アトレーユと幸いの竜フッフールがいてくれて本当に救われました。
アトレーユとフッフールは、バスチアンをファンタージェンへ呼ぶきっかけを作った存在で、バスチアンの友達。
この二人がいなかったら、バスチアンは本当に不幸だったと思う。
そしてもちろん、ラストまでがとてもいいです。
人間が最後に行き着くのは、やっぱりここなんだな、と感じます。
何もかもがかなった最初のファンタージェンと同じくらい、心が満たされて、
すっごく幸せな気持ちになりました。
いつも思わず涙が溢れてしまいます・・・。
はじめてこの本を読んだときは、実はあまり好きじゃなかったお話なのですが・・・今となっては大好きなお話になりました。
どうして最初は好きじゃなかったのかと言うと、この本は章ごとに分かれているのですが、その終わりが全部「けれどもこれは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしよう」と書かれているのです。
やっぱり、想像力が豊かでない私にとっては、ちゃんと物語を終わらせてほしい、と思ってしまうのです。
ファンタージェンの様々な生き物たちの物語が、この先どうなるのかがなぜ書いていないんだろうか、と。
なんだかおあずけをくらったみたい・・・。
でも、二回目に読んだときは、その気持ちはかなり薄くなっていました。
なぜなのか、理由を考えてみると・・・
それは多分・・・。
ラストで、ある人がこう言います。
「ほんとうの物語は、みんなそれぞれはてしない物語なんだ」と。
つまりそういうことで、ファンタージェンの生き物たちの物語も、ずっとずっと続く物語なんですね。
そう思ったとき、彼らが本当に生きている存在に感じられて、だから終わりがないんだ、と納得したのです。
はてしない物語のラストもまた、同じ言葉で締めくくられています。
私は、それが本当に嬉しいと思っています。
ちなみに、『ネバーエンディングストーリー』として、映画化されているようです。
映画では、本とはまた違った世界を楽しめるかもしれません。