アクロイド殺し
アガサ・クリスティー 羽田詩津子訳 早川書房
あらすじ
ある秋の日、キングズ・アボット村で未亡人が亡くなりました。そしてその夜、彼女の死の真相を知る、地主のロジャー・アクロイドが何者かに殺されます。
隠居して村に引っ越してきたばかりの探偵、エルキュール・ポアロは
村の医師ジェームズ・シェパードとともに、事件を調査することに。ちょうどその夜、屋敷には何人もの人物が滞在しており、
容疑者たちはみんな何かの秘密を抱えていました。はたして、いったい誰がアクロイドを殺したのでしょうか?
感想
有名なアガサ・クリスティーですが、その中でも有名だと思われる探偵ポアロシリーズです。私は読んだことがなかったので、何か読んでみたいと思っていました。
この作品はかなりの有名作品で、話の内容もネタバレされているほどです。
私もざっくりとした内容は知っていましたが、とても興味があったので
読んだ時はかなり興奮してしまいました。
淡々とした文体でとても読みやすいです。
その中にいろいろとちりばめられた秘密がうまくて、読んでいて面白い。
ポアロもすべてをこちら側に見せているようで、肝心なところはうまくごまかしていて、
なんだか手品師のようでした。最後のポアロの行動はちょっと疑問に思いましたが、
なにもかもうまくいく方法は状況的に難しいんでしょうね。
殺人事件の裏に、恋愛の問題、親子の問題、金銭の問題、夫婦の問題が複雑に絡んで、
メインはアクロイド殺しの犯人なのですが、それ以外の話もとても興味がわき、最後まで一気に読みました。特に新しく生まれたカップルのくだりは、微笑ましくて、暖かくてよかったです。
殺伐とした中の、ほっこりエピソードは優しい気持ちになりますね。
あとは終盤に、ポアロが犯人像を語る場面も心に残りました。
ぼんやりしていた犯人像とその心理が、急に明確に伝わってきて、
穏やかな場面なのに攻め込んでくる感じが印象深かったです。
何度も読み返したくなる、いい作品だと思いました。