赤毛のアン

 モンゴメリ作 村岡花子訳  新潮社版


あらすじ
孤児の女の子アンが、マシュウとマリラ兄妹にひきとられて、成長していく物語。



感想
あらすじを書きにくい・・・(笑)

とにかく、これは、アンの魅力が溢れているとしか言えないです。


全編通して、ほとんどがアンのおしゃべり(マシュウ、マリラ、友達のダイアナに向けての)で展開されていくというのはかなりすごいです。

でも、そのアンのおしゃべりがすごく大好きで、気分はすっかりマシュウでした。

マシュウは、初めてアンと出会った時からアンを気に入っていたので。



なんといっても、アンの想像力の豊かさは素晴らしいです。

湖も、木々も、アンの手にかかれば何もかも特別な、夢の世界のように感じられます。


今まで孤児院にいて、辛い思いをたくさんしたアンだからこそ、些細なことがすごく特別に感じられるのでしょうね。
幸せに慣れて、当たり前にならないアンの謙虚さも、とても素敵です。



アンが成長して、みんなで音楽会に行ったとき、お金持ちの夫人を見かけて、お金持ちになりたいかという話になったのですが、アンは答えます。


「そうね、あたしは自分のほか、だれにもなりたくないわ。
たとえ一生ダイヤモンドに慰めてもらえずにすごしても。
あたし、真珠の首飾りをつけた、グリン・ゲイブルスのアンで大満足だわ。
マシュウ小父さんがこの首飾りにこめた愛情が、ピンク夫人の宝石に劣らないことを知っているんですもの」


思わず、泣き出しそうになるくらい、素敵なセリフです・・・。

その首飾りは、マシュウがアンのために買ってくれたものです。

きらびやかな宝石としての価値は高くはないけれど、どんなものよりも価値があることを、アンはちゃんと理解しているのです。



そして、マシュウとマリラ。アンを心から愛しているこの二人も大好きです。

特にマシュウは、何というか、私の分身という気さえするほどです。

マリラは、アンのおしゃべりをさえぎったり、しつけをするので厳しくしたりと甘やかさないのですが、
マシュウはアンの幸せだけを願っているという感じで、アンのおしゃべりはいつまででも聞いているし、アンを叱ることなんて全くありません。

そしてアンのために何でも買ってあげようとするのです。


優しいマシュウと、厳しいマリラ。
この二人がいたから、アンはあんな風に成長できたのでしょう。
もちろん、もともと素直で感受性豊かな、優しい女の子でしたが。



そんな風に、アンの幸せを願って、見つめていた私にとって、物語の終わり頃に起きたことはとても辛かったです。

あまりにも悲しくて、やりきれない気持ちでいっぱいでした。

それでも、アンがまた幸せになれる時は来るのでしょう。

この先のアンの人生に、たくさんの辛いことはあったとしても。



・・・でも、悲しいことに私はそれを読むことができません。

赤毛のアンシリーズはたくさん出ていて、アンが大好きな私は、もちろん興味があります。
アンはどのような人生を歩んでいくのだろう・・・と。

しかし、この『赤毛のアン』のお話で、私がどうしても好きになれない展開があり、そのためにこの先も見ることができません。



それは、私は、ギルバートが好きじゃない・・・ということです(泣)


{以下、ギルバートを知らない人のために反転で書きます。
見ても大丈夫な人だけ、ドラックしてお読みください。}

ギルバートは、初対面でアンを「にんじん」とからかいます。アンは、自分の赤い髪を何よりも嫌がっていたため、その瞬間から、激しく彼を憎むのです。

しかし、物語の終わりには許してしまい、何だかこの先相手役になるような雰囲気です。
アンが憎んでいる間、私自身も彼が大嫌いでした。アンと共に、彼をライバル視し、負かしてやれと思っていたのです。(彼とアンは共に秀才だったので、ライバルでした)

それなのに、アンの相手役になるなんて・・・。



悲しいことですが、物語の展開が、自分の望まないほうへ行ってしまうことはよくあることです・・・。
そしてそれを差し引いても、やっぱりこの物語はとても面白いです。


読むたびに、ありふれたすべてがきらきら輝いているのだと感じ、アンの幸せを望み続けるマシュウになりきり、たくさん泣けます。

『赤毛のアン』は、本当に大好きなお話です。



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