アンネ・フランク最後の七カ月
ウィリー・リンドヴェル 坂井府+坂井明子訳 徳間書店
あらすじ
同名のドキュメンタリー映画で、筆者が何人かの女性と対話した内容を、完全に再現したもの。
ここに記された六人の女性は、いずれもアンネ・フランクと何らかのかかわりを持っていました。
そしてそのかかわりは、ほとんどが、アンネが収容所に送られてからのことです。そのため必然的に、アンネが死んだときの頃のことを知ることができるのです。
その中に一人だけ、アンネを昔から知っている、アンネの親友で、日記にも何度か登場した女性もいます。
感想
『アンネの日記』を読んだ私は、アンネのその後も知りたくなりました。
アンネは収容所でどのように過ごし、そしてどのように亡くなったのか。その答えが、この本には記されています。
と言っても、アンネのための本ではありません。
主に記されているのは、同時期に収容所で過ごし、生きて収容所を出ることができた六人の女性です。
ナチス・ドイツに苦しめられたユダヤ人は、アンネだけではありません。
若くして病気で亡くなったアンネはとてもかわいそうだと思うけれど、
それと同時に、そんな苦しい状況下をたくましく生き抜いた六人の女性の素晴らしさを、私は本当にすごいと思います。
不潔で、いたるところに病気が蔓延し、それでも毎朝点呼があり、何時間も立たされるのです。
何度も「選別」があり、選別で生死が決められます。生き残った人は、労働に借り出され、監視員に殴られたり、殺されたりは日常茶飯事です。
生きる希望など、どこにもありません。
そんな気が狂いそうな日々の中、彼女たちは、「自分」を失うことなく耐えたのです。
おそらくアンネが耐えられなかったのは、姉のマルゴットが死んでしまったことが大きかったのでしょう。
生き抜いた人たちはみんな、誰かと支え合って、「自分」を保ち、生きることができたのです。
自分だけでは、到底無理でした。
アンネ・フランクは、あの時代の、ユダヤ人の象徴です。
私も、アンネのことが知りたくてこの本を買いました。
でも、アンネ以外の人たちの・・・生きて収容所を出られた女性の話を読むことができて、本当によかったと思いました。
まさに地獄のような場所で、それでも生きる希望を捨てなかった人がいる。
それは何よりも素晴らしい、奇跡だと思うからです。