だから恋は少しせつない

 吉元由美作  大和書房


あらすじ
短編がいくつか入った小説です。
全部で九つの恋物語が書かれていますが、どのお話も、胸がきゅっとするような
せつなさを感じます・・・。
文体はとても読みやすく、さらさらと流れるような書き方で、
静かな切なさにひたれるような気がします。



感想
私は一番最初の『恋がはじまるとき』という物語が、一番好きです。
恋の始まりには吸引力が必要だ、という言葉には、なるほど、と納得します。
あの好きになったとわかった瞬間の、不思議な気持ちが、その言葉ですごくよく表されていると思います。
ラストまで一気に読んで、切なさを振り払ったような明るさが、何だか気持ちよかったです。

また、どうしようもない切なさを描いた『言葉にできなくて』と、
『さよならのあとで』の二つも好きです。

『言葉にできなくて』のほうは、本当は自分の方が両思いだったのに、
友達に先を越されてしまったお話で、かわいそうでやるせない感じが胸に響きました。
『さよならのあとで』は、大好きな彼と別れるお話です。
彼も主人公もお互いのことを好きなのに考え方がどうしても合わない、そのために
今別れを告げるしかない、ということになってしまうのです。

片思いでも、両思いでも、別れるときでも、やっぱり恋は切ないんだ、と思います。
しかしそのときはただ苦しいだけの気持ちが、時がたつと
切ない、優しい思い出にかわることもあります。

読み終わってみて、やっぱり恋は素敵だ、と思いました。
実際に恋をしていなくても、しみじみと恋を味わうことができるこの本は
私にとってお気に入りの一冊です。



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