とびだせズッコケ事件記者(シリーズ第七巻)
那須正幹作 前川かずお(亡くなられるまで) 高橋信也(それ以降、作画として)画 ポプラ社文庫
あらすじ
班ごとに壁新聞をつくることになり、ハチベエの班では、それぞれの役割を決めることにします。
ハチベエの係は新聞記者。
記事を取ってくる係ですが、実は班にとって邪魔だから、新聞作りにノータッチな係を押し付けただけでした。
そのことをハカセに指摘され、怒り狂ったハチベエでしたが、壁新聞で自分の記事が誉められたことで機嫌を直します。
また、自分を馬鹿にしたハカセや、モーちゃんも、それぞれの班から新聞記者を押し付けられたことがわかり、上機嫌になります。
何はともあれ、三人で特ダネを取ってやろう、と意気込む三人。
交番にネタ探しに行ったところ、そこで自称探偵ばあさんの重富フサと知り合います。
おばあさんは、この花山町のことならとても詳しいそうですが、かなりのおっちょこちょい。
それでも、このおばあさんから得た情報で、それぞれ記事を書くことにしました。
ハカセは、おばあさんが交番にやってきた理由、偽札騒動のてんまつを、
モーちゃんは、おばあさんが言っていた、『風月堂』と『メルシー』二つのケーキ屋のうち、どちらのほうがおいしいか。
そしてハチベエは、学校の長井先生と、担任のたくわんこと宅和先生の娘、めぐみさんとの熱愛についてを。
三人それぞれの奮闘が始まります。
感想
これは大好きな作品です。
一番好きなシーンは、なんといってもモーちゃんの、ケーキ食べ比べのシーンですが、本当に本当にケーキがおいしそうなんです!!
モーちゃんは食いしん坊なので、たいていどの本でも食べ物が描かれているのですが、書き方がいつもおいしそうで、同じく食いしん坊の私にはたまらない魅力です。
なかでも、このケーキの描写が・・・。
これを読むと、確実にケーキが食べたくなります。
ケーキのこと以外でも、この本は本当に面白いです。
偽札騒動を記事にしようとしていたハカセが、偽札について調べ始め、偽札の歴史についての記事を書いてしまうところは、本当に彼らしい。
私自身、歴史が好きなので、ハカセの気持ちがよくわかります。
また、ハチベエの取材で、大人の恋愛問題が進展するところもとてもいいです。
ラストシーンでは、私もすごくすがすがしい気持ちでいっぱいになりました。
そして、探偵ばあさん、重富フサさん。
一人暮らしで気ままなおばあさんですが、本当は寂しい、というのが伝わってきて、複雑な気持ちを抱かせます。
だからこそ、おばあさん救出の場面では、おばあさんに対する感情があって、よりハラハラドキドキ感が強くなった気がします。
すべてが面白い、そんな一冊だと思います。