ズッコケ山岳救助隊(シリーズ第二十一巻)

 那須正幹作 前川かずお(亡くなられるまで) 高橋信也(それ以降作画として)画  ポプラ社


あらすじ
夏休みの終わりごろ、三人は花山町内のこども会で行われる山登りへ行くことになります。
厳しい登山なので行く人が誰もいなかったのですが、ゲームにつられて参加することにしたのです。


参加メンバーは、この山登りの主催者のおもちゃ屋の有本さん、その娘真奈美と弟の一郎。
一郎の友達、中司幸雄。そして三人とハカセの妹道子、その友達の湯原恭子。そして恭子の両親の合計十一人。


一日目の山登りは何の問題もなく終わります。
しかし翌日・・急に湧き上がった霧に巻き込まれたみんなはバラバラになってしまいます。
雨も降りだし最悪の状況です。


ハチベエ、ハカセ、モーちゃん、真奈美以外は有本さんに無事保護されました。
有本さんは残りの子供を捜して山を駆け回ります。


しかし実は、彼らは全員合流できていて無事でした。
そして四人で何とか山を降りようとしていたのです。
ただし今いる場所を特定できないので、有本さんたちのところへ戻ることはできません。


そういうわけで四人は、雨の中をひたすら歩き続けます。
そしてやっと前方に小屋が見えました。
ところがようやくたどり着いた小屋では、また別のとんでもない問題が発生していたのでした・・・。



感想
山登りは昔やったことがありますが、見晴らしのいい景色とおいしい空気は本当に感激しました。
疲れが吹き飛ぶというのを心から思った瞬間です。

あの感覚は、実際登らなければわからないものですね。
しかしその後山登りなど全くしなくなった私は、あの感覚を味わうことはもう二度とないだろうなと考えています・・。


それでもその懐かしい感覚を思い出しながら読みました。
相変わらず丁寧な描写なので、そこにいるような気分でとても楽しかったです。


山登りの話かと思いきや、物語はまた別の方向へ発展していくのですが・・
そのメリハリの利いた展開に終始ドキドキしっぱなしでした。


一方で、ひたすら責任を感じて走り回る有本さんの姿が切ないです。
私たちは三人や真奈美が無事なのを知っているけど、有本さんは知りません。
子供たちを捜して、土砂降りの雨の中を山を歩き続けます。
その姿が哀れでかわいそうで、無事なのを教えてあげたくなります。


そしてラストで、あれだけ大変な思いをしたハカセが「もういっぺん縦走してもいいなって思うんだ」というのが何だかよかったです。
彼は山登りの魅力を、体にちゃんと感じていたんですね。
三人らしい終わり方が面白いラストでした。



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