天使がくれた時計(シリーズ第二巻)

 リチャード・P・エヴァンズ作 笹野洋子訳  講談社


あらすじ
「クリスマス・ボックス」から時が過ぎ、リチャードの子供のジェナが結婚する前夜、
かつてメアリーアンから受け取った時計を、リチャードはそっと眺めます。


その時計を託したメアリーアンは、謎めいた表情をしていて、その時計には何かの意味があるようでした。


リチャードは、メアリーアン亡き後、デイヴィットの日記を受け継ぎました。

デイヴィットはメアリーアンの亡き夫です。

デイヴィットの日記には、メアリーアンとの愛がつづられていました。

そしてそこには、「時計」にまつわる物語が・・・。



デイヴィットはお金持ちでしたが、母親に捨てられたため、愛に飢えていました。

メアリーアンとの出会いは、彼女が秘書募集の面接にやってきたときでした。

ほどなくして、お互いに惹かれあった二人は、結婚することになります。


二人の愛の中で生まれた、アンドリアと名づけられた女の子。

ようやく幸せを手に入れたデイヴィットとメアリーアン。

幸せなときは永遠に続くかと思われました。


しかし、デイヴィットの友人、黒人のローレンスをめぐって、
悲劇が起こります。

黒人は差別されていましたが、器用な彼は時計の修理を頼まれることが多く、
依頼に来る人たちとはそれなりに仲良くやっていました。

そんな中、ある人がローレンスに豪華な時計を遺して亡くなり
そこから問題が勃発したのです。

ローレンスが起こしてしまった事件。

黒人に不利な裁判を思い、ローレンスをかばうデイヴィット。

それほど大事にならないだろうとデイヴィットは考えていましたが
物事はそう単純にはいきませんでした。

この事件をきっかけに、デイヴィットにとって悲しいことが起こります・・・。



デイヴィットとメアリーアンの物語から、再びラスト、リチャードの回想に戻ります。

メアリーアンは、時計を、ジェナが結婚するときの贈りものとして託しました。


リチャードはジェナにそれを贈ります。


その瞬間、彼はメアリーアンが言っていた意味を理解したのです。

それは、時がもたらす、奇跡の贈りものでした・・・。



感想
「クリスマスボックス」第二弾です。
前作を読んでいたほうが、わかりやすいです。

しかし物語の中心は、過去のメアリーアンとデイヴィットが知り合うところからなので、読んでいなくてもわからないことはない・・・かもしれません。


リチャードに大切なことを教えてくれた、メアリーアン。

彼女の過去はどんな風だったのか、というのが今回の物語です。

そして、メアリーアンより十四年前に亡くなったデイヴィットが話の中心です。


今回の物語は「黒人差別」が重要な問題になっています。

黒人であるために差別され、それをもう恨む事もなく受け入れているローレンスの姿には、胸が痛くなります。



今回もまた、「愛」とはどういうことか、というのがひしひしと伝わってくる物語です。

デイヴィットやメアリーアンの愛は、とても深く、大きいものでした。

そしてその思いは、時を越えて、リチャードに受け継がれていきます。


メアリーアンから大切なことを教わった彼もまた、ジェナにそれを伝え、彼女もまた、子供たちにきっと伝えていく・・・そんな気がします。



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