死の国からのバトン(シリーズ第二巻)

 松谷みよ子作 司修画  偕成社


あらすじ
小学六年生の直樹は、妹のゆう子、お母さんと一緒に、冬、父方の祖父の家に行くことになりました。

ところがちょうど行く日の朝、行方不明になっていた飼い猫のルウが、ひどい死に方をしているのを発見します。
そのあといなかへ向かう電車で、「死んだものは阿陀野の山へ帰る。阿陀野の山は、ご先祖の山だ」と、同乗していたおばあさんに聞かされます。

阿陀野は、直樹たちがこれから行くところです。
直樹は、猫のルウも、阿陀野に向かっているのだろうかと考えます。

祖父の家へついた直樹は、裏山へ行くことにしました。
雪の積もった裏山へ上ると、そこには小さなお墓があり、 不意にたくさんの子供たちが現れます。
中でも、一番年上の男の子は、直七と名乗り、「おまえの先祖や」と言いました。

そして直七にルウのことを聞くと、山のおばばの話をしてくれました。

山のおばばは、山の神様で、命を見守り、育てて、土にもどす、そういう存在なのだと。
だから、山のおばばなら、猫のことを知っているだろうということになります。


直七と共に、山のおばばと対面することができた直樹。
しかしそこで見たものは、目を背けたくなるようなむごい、猫たちの苦しみでした。

その猫たちの苦しみは、人間が生み出したものであり、その毒で、人間もまた死ぬのだとおばばは言います。
あまりにも辛い現実に、思わず直樹は逃げ出してしまいます。
ルウがそこにいるのに、目をそむけて・・・。

気がつくと直樹は、祖父の家に寝ていました。
捻挫をしてしまったため、治るまでここにいることになった直樹は、さっきのことを考えないようにしようとします。
しかしそこで、恐ろしいニュースを目の当たりにします。

生きていること、生きていくことが恐ろしくなった直樹は、どうしても直七に会いたくなりました。
そこで、一番最初に直七が言っていた方法で、会おうと考えます。
そしてひゃくまんべんのじゅずをまわしたとき、直七がまた姿を現しました・・・。



感想
一作目は、「ふたりのイーダ」で、原爆についてでした。
今回は、「公害」です。
一応シリーズ物なのですが、一巻ずつ完結しているので、どこから読んでも大丈夫です。

これは「公害」がテーマですが、それだけではなく、「先祖」からずっと続く、大地と人間と様々な生き物たちの「いのち」。
すべてのいのちについて考えること、というのが本当のテーマのような気がします。
公害は人間が生み出したものだから、いのちの大切さを考えれば公害はなくせる、ということかもしれません。

非常に重い内容なのに、不思議とそんな感じがしません。
それは、直樹と直七の交流が本当に自然で、子供らしくて穏やかだということと、
本当のラストに直樹が気づいたことで、救われたからだと思います。

私は、このシリーズでは(五作品ありますが)この話が一番好きです。

すごく大人で、しっかりしていて、優しくて、頼りになって・・・直樹に大切なことを教えてくれた直七。
彼は堂々とした自然のように、この物語の中に存在します。
たぶん、直樹も直七のように育っていくんじゃないかと思います。
(この先のシリーズで成長した直樹に会えますが)

そして、この物語のラストで私はいつも涙を流します。
直樹が大切なことに気がついた瞬間、私もまた、同じ気持ちがあふれました。
このお話を読んでから、私は「バトン」という言葉が好きになりました。



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