ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(シリーズ第三巻)

 J.K.ローリング作 松岡祐子訳 ダン・シュレシンジャー画  静山社


あらすじ
ホグワーツでは、三年生からホグズミードという、魔法の村へ遊びにいけるようになります。

しかしそれには両親か保護者の許可が必要で、ハリーは、お世話になっているバーノンおじさんに頼むしかありません。
ハリーはどうしても行きたいため、バーノンおじさんと約束をします。
バーノンおじさんの妹マージが滞在する間、完璧に言いつけどおりに振舞えば許可をくれるという約束です。

ところがハリーは最後の日に、怒りに任せておばさんに魔法をかけてしまいました。
半人前の魔法使いが、外で魔法を使うのは許されていない行為です。
ハリーは前にも同じことをしていたため(ハリーがしたことではないのですが・・・)
とっさにトランクに荷物をつめて家を飛び出しました。
退校処分になる前にどこかに逃げようと思ったからです。

ところが、ハリーはなぜか退校処分にならずにすみました。
それどころか、魔法大臣(魔法省の一番偉い人)ファッジ自らがハリーを見つけ出し、安全な場所を確保してくれたのです。

その理由は、のちに明らかになりました。
アズカバンという魔法使いの監獄から、一人の脱走者が出たのです。
名前はシリウス・ブラック。
十二年アズカバンの独房に入れられていたのが、つい最近脱獄し、ハリーを狙っているということがわかったのです。

ハリーは学校で先生方に見張られる日々を送ります。
それくらいシリウスは恐れられている存在なのです。
ディメンダー(吸魂鬼)という、恐ろしい怪物に見張られたアズカバンは、脱獄不可能と言われていました。
それを脱獄したばかりかいまだに発見されていないのは、ありえないことだったのです・・。

しかし窮屈な毎日だけでなく、ハリーを苦しめたのは何よりもディメンダーでした。
ホグワーツを守るために配置されたディメンダー。
しかしハリーだけが、ディメンダーと会うたび失神してしまうという事態に陥っていました。
そして遠くなる意識の中、誰かの叫び声を聞く羽目に・・・。

そんなハリーを助けてくれたのは、新しい『闇の魔術に対する防衛術』の先生、ルーピンでした。
彼はディメンダーと戦う方法をハリーに教えてくれます。

しかしそのあと、ハリーは何もかもを忘れ去るほどの、衝撃的な事実を知ることになります。
それはハリーの心に激しい憎悪をかきたてる、耐えられない真実でした・・・。



感想
面白いという言葉しか出てこないくらい、面白いです。今回も。
「シリウス・ブラック」の名前は、一作目に出てきたし、「アズカバン」という監獄のことも、二作目に出てきました。
こうして次々にいろいろな謎が明かされていくのは楽しいです。

しかし、ハリーにとっては、今回も災難の連続です。
ヴォルデモートを破滅させた唯一の存在として、彼は生まれたときから多くのものを背負わされています。
今回のハリーは、それをますます強く実感させられる、かわいそうな経験をします。

また、ハリーは、まだまだ子供なために危険性がよくわかっておらず、みんながハリーを心配して監視しているのをうっとうしく思ったり、自分の命が狙われていることよりも、ホグズミードに行けないことで落ち込んだり。
はてはその目をかいくぐってホグズミードに行ってしまうなど、かなり無鉄砲なところもあります。
当然、ロンや双子の兄フレッド&ジョージもそんなハリーの手助けをしてしまいます。
(ハーマイオニーだけが、いつも心配しているのです)

そんな「子供らしさ」も、ハリーの魅力です。
そのために危険な目に合うこともたくさんあるけど、それでもそんなハリーだから、共感が沸いてくるのです。

そして今回、ハリーは、ハリーにとって特別な存在の人と出会うことになります。
そのことがわかるラスト付近は、とても感動しました。
本当に読み応えたっぷりの第三作目です。



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