時計は三時に止まる

 クレイグ・ライス作 小鷹信光訳  創元推理文庫


あらすじ
真夜中、ふと聞こえた目覚まし時計のベルで目を覚ましたホリー。
恐ろしい夢を見ていた彼女が、近くの時計に目をやると、三時でした。

そしてどこからか再び聞こえてくるベルの音。
部屋を出て確かめに行くと、音はやみ、誰もいない部屋には三時で止まった時計が。


さらに彼女を導くように鳴り響くベルの音。
恐ろしくなりながら部屋に入るとやはり誰もいない部屋に、三時で止まった時計が目に入ります。


そして開け放たれた部屋にぽつんと一人、叔母のアレグザンドリア・イングルハートの死体が座っていたのです・・・・。



警察は第一発見者であるホリーを疑い、捕えられます。
しかしホリーの無実を信じる人たちは、独自に事件を解明するために動き出します。


なぜ時計は三時で止まっていたのか。
アレグザンドリアの遺言書の内容とは?

事件は新たな被害者を生み出しながらも、やがて真相が明らかに・・・。



感想
冒頭、ホリーが叔母を発見するくだりが彼女を中心にして書かれているのですが、
その部分を読んだ私は「これはホラー小説?」と思いました。

真夜中の屋敷で、突然目をさまし時計を見れば三時で止まっている。
そして目覚ましのベルがどこからか聞こえてくる。
行ってみれば誰もいない部屋で、いつの間にか時計も止まっている。本当に恐ろしかったです。


しかし内容は全く怖くなく、むしろ安心して読める、どちらかというとのどかな雰囲気だと思いました。
冒頭であんなに怖がらされたのが嘘のようです。


ホリーの無実を最初から信じている人たちが独自に捜査する、というのは読みやすいつくりですし、
少なくとも彼らは味方だなと思えて安心できます。

また、この小説をのどかな雰囲気にしているのは、彼らの行動ですね。
ホリーの無実を信じているからといって、普通はしないようなことを平気でやらかしますし、彼らの空気は酒ですかと言いたくなるほど、どんな時でも酒を飲みまくっています。

車の運転中でも酒を飲み、またとんでもないスピード違反を平気でやり、常識をぶっとばしているような彼らの行動が、なんともユーモラスで非常になごみました。

全体的に、適度にハラハラさせられて、後味もそんなに悪くなくて、なかなか面白かったです。



HOMEへ  図書室へ  長編目次へ