ソフィーの世界

 ヨースタイン・ゴルデル作 須田朗監修 池田香代子訳  NHK出版


あらすじ
ある日、ソフィーは自宅の郵便受けに、自分宛の不思議な手紙を見つけます。
それには、たった一言、「あなたはだれ?」の文字。
そしてさらに、「世界はどこから来た?」という手紙が届きます。

突然の問いかけに混乱するソフィー。
そんなソフィーに、またも今度は絵葉書が届きました。
そこには、「ヒルデ」という十五歳の女の子に向けての、誕生日お祝いメッセージが記されています。

ソフィーももうすぐ十五歳。
だけど、ソフィーはヒルデなんて知りません。
それなのに、絵葉書の主は「これはソフィーに送る。手っ取り早かったから」と書いていたのです。

いったいどういうことだろう?
最初の問いかけと、絵葉書は同一人物からのもの?
ソフィーは初めて、自分の世界が大きく変化していくのを感じ取ります。

そしてその後、ソフィーの元に「哲学講座」が届きます。
ソフィーはもちろん、そんなものに申し込んだ覚えはありません。
それは謎の哲学者からの、ソフィー宛の手紙でした。

それから次々に、ソフィー宛に「哲学講座」が届きます。
ソフィーにとっては、目を離せなくなる内容です。
なぜならソフィーは突然、世界がありふれたものでないことに気がついたからです。

哲学者たちの問いかけは、ごく単純なものです。
世界はいつ、どうやって生まれたのか?
自分たちは、どこから来たのか?
周りにあるすべてのものは、誰かがつくったものなのか?
それとも、無から何もかもが生まれたのだろうか?
ただ、その問いに答えは見つかりません。
だから、哲学者たちは自分で、その答えを捜し求めるのです。

ソフィーもまた、自分を見つけ出すために、哲学講座を受け続けます。
謎の哲学者がすべての鍵を握っているのだろうと、はじめソフィーは考えていました。
ある日突然、平凡なソフィーの世界に、不思議を巻き起こしたのは彼だったのですから。
しかし彼もまた、大きな謎の中に存在していたのです。

ソフィーに何度も届く、「ヒルデ」宛のバースディーカード。
それは、ヒルデの父親からのものであり、謎の哲学者とは関係ありませんでした。
ヒルデの父親は、ソフィーの父親と同じように外国に行っているらしく、
娘の誕生日には帰るようです。

そして、ヒルデの忘れ物。
それが、なぜかソフィーの部屋で突然見つかります。

いったい、自分とヒルデの間にはなにがあるのだろう?
そして、このヒルデの父親はなぜ自分に、娘宛のカードを送るのだろう?

やがてソフィーと謎の哲学者、アルベルトは
この世界の大きな謎に迫ります。
そしてそれは、ソフィーの世界の、すべての謎を解き明かす鍵だったのです。



感想
この本との出会いはよく覚えています。
ふと分厚い本に惹かれて、中身をぱらぱら、とめくった私の目に、
「あなたはだれ?」という一文が飛び込んできたのです。
その印象的な言葉に驚き、気がついたらレジに向かっていました。

しかし中身が「哲学ファンタジー」だとは、読み始めるまでは全く気づいていませんでした。
つまり、表紙をほとんど見ていなかったのです。

中身を読み始めてしばらくして、「なんだか哲学の話ばっかりだな?」と不思議に思って表紙を見たら、「哲学ファンタジー」と書いてありビックリしました。
道理で哲学の話ばかりのはずです・・。
もし、ただ表紙を見ただけだったら、「哲学か」と思って買わなかったでしょう。
そう考えると、とても不思議な気がします・・・。

「哲学」というのは、私の苦手科目でした。
たった一言言うために、ひたすら回りくどい文章をこれでもか、とつめこんで、
結局言いたかったのは最初の一文?というような本を読まされ、非常に嫌でした。

しかし、この本はとってもわかりやすく、簡単なたとえをたくさん引用していて、
理解しやすい哲学講座です。
この本が哲学の教科書だったら、本当に授業が面白かっただろうと思います。

哲学講座は、古い時代から順に、歴史と共に、宗教とも交じり合いながら展開します。
その時代、その人で、考え方は全く別で、私なんかは一人の哲学者が言った言葉にいちいち納得し、また次の哲学者の考え方に相槌を打つ、という繰り返しでした。

いろいろな人の様々な考えがわかってとても楽しかったですが、「なにもわからない」部分から調べて、よくそんな考えに行き着いたな、と感心しました。
こういう哲学者たちが様々な問いかけをして、それで今この世界の謎がいくつも解き明かされているんですね。

さて、この本は哲学だけの本ではありません。
ソフィーの世界に、突然舞い降りた不思議なものたちは
いったいどこから来たのか、というミステリーがもう一つの楽しみです。

ある日突然、平凡な世界が変わってしまう。
というのは私たちの日常にもあることですが、
それは現実的な領域を外れることはありません。
ところがソフィーの場合、突然ありえない出来事に遭遇するのです。

ソフィーの世界全体が、哲学そのものです。
その謎解きは非常に独創的で、何だか不思議な気持ちになってしまいました。
まさに物語に入り込むような、ハラハラドキドキな展開です。
ラストまで読んで、大きく息を吐き出しました。
すごくよかったです!

内容は全く難しくないので、誰でも楽しめると思います。
ちょっと分厚いので時間はかかるかもしれませんが、
その分たっぷりと、大きな「時の流れ」や「世界」を味わうことができると思います。



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