みどりのゆび

 モーリス・ドリュオン作 安東次男訳  岩波少年文庫


あらすじ
大金持ちの両親の元に生まれた、かわいらしい男の子、チトは、本当に特別な子供でした。
その特別な理由の一つが、「みどりのゆび」を持っていることです。

「みどりのゆび」は、世界中のどんな場所にでも花を咲かせることができる、不思議な指です。
チトがそれを持っているのを知ったのは、庭師のムスターシュで、
チトが親指を土に突っ込んだだけで、五分もしないうちに芽が出たのを見たのでした。

それからチトは、その指をムスターシュとチトだけの秘密にし、花のことをいろいろ勉強することになりました。
また、社会については、かみなりおじさんという人に教わることになりました。

かみなりおじさんから刑務所のことを聞いたチトは、刑務所に花を咲かせることを思いつきます。
チトのやったことは、他の人には誰がやったことなのかはわかりませんでしたが、
ただ一人、ムスターシュだけは知っていました。

次にチトがムスターシュのところを訪れたとき、チトのしたことを誉めてくれ、
花についての的確なアドバイスもしてくれました。


そのあともチトは、かみなりおじさんから教わるたびに、みどりのゆびを使います。
そしてチトがみどりのゆびを使うたびに、そこから希望が生まれてくるのでした・・。


社会の仕組みを教えて、チトを自分たちの枠組みにはめようとしている大人たちの考えは、チトには全く無意味でした。
チトは物事をまっすぐに純粋にとらえ、チトにしかできないやり方で変えていきます。

しかしやがて、チトにもどうにもできない出来事が訪れます。
チトはそのことを理解するために、みどりのゆびを使いました。



感想
「みどりのおやゆび」を持った、不思議な男の子、チト。
その純粋な心は、たくさんのものを幸せに変えていきます。

もちろん、周りの大人たちはそれを誰も知りませんが、
チトには自分を理解してくれる、ムスターシュがいます。
だからチトも余計に張り切って、
いろんな場所を変えていったのでしょう。

それにしても、チトの世界はとても単純で、
大人たちはものすごく複雑です。

幼いチトに踊らされる大人たちの姿は、ちょっと笑ってしまいますが、
そういう矛盾だらけなのが世の中だな、と思うと、ちょっと悲しくもなります。

そしてこの物語は、なんだかしみじみとよい感じです。
チトが奇跡を起こした後に、必ずムスターシュが「やあ来たね!」と言って
誉めてくれるのが、とても好きです。

そして、物語が終わったときには、
寂しいような、でも安心したような、不思議な気持ちでした。

チトの「みどりのおやゆび」は、本当に素晴らしい力です。
私にもあったらいいのになぁ、と思いながら読んでいます。



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