マディソン郡の橋

 ロバート・ジェームズ・ウォラー作 村松潔訳  文藝春秋


あらすじ
何かを探しながら旅を続ける、カメラマンのロバート・キンケイド。
彼は五十二歳。鍛え上げられた肉体はまだまだ若く、妥協はしながらも、
自分の撮りたい写真を求めて生きていました。

一方、四十五歳のフランチェスカは、夫と二人の子供と穏やかに・・・そして、
心から満たされることのない生活を静かに送っていました。


ロバートとフランチェスカが出会ったのは、ロバートが『屋根つきの橋』を求めて、旅をしていたときです。

七つあるといわれていたのに、ひとつどうしても見つからなかった『ローズマン・ブリッジ』の場所を聞こうと、
彼が辺りを見回したとき・・・偶然、ポーチに出ていた彼女を見つけ、声をかけたのでした。


出会った瞬間から、二人は惹かれあいます。
出会ったばかりの男性の車に乗り、ローズマン・ブリッジの場所を教えるフランチェスカ。
その後、彼女はロバートに夕食も勧めます。(夫と子供は二日くらい帰ってこない予定です)

ロバートは彼女とビールを飲み、自分のことを話し、夕食の手伝いをして楽しく過ごします。
その間ずっと、彼女を見つめ続けたまま。


二人とも惹かれあいながらも、分別があるため、もどかしい思いのままいったん別れますが、
勇気を出したのはフランチェスカでした。

彼女は彼へのメモを、ローズマン・ブリッジに残し、ロバートがそれを見て、再び
二人は同じ時を過ごすことができたのです。


そして、これ以上踏み込んではならないと思っても、気持ちは止められず、
やがて二人は愛し合います。

それは、運命の恋と呼べるような想いでした・・・。



感想
とても素敵な・・・というのもありふれた言葉ですが、でもとても素敵なラブストーリーだと思います。

出会った瞬間にお互い恋に落ちる、というロマンティックなシチュエーションと、
それがまだ若い二十代の男女ではなく、
ある一定の年齢に差し掛かった大人たちの間で起こったというのがますます素敵です・・・。
人生を、恋を、夢をあきらめかけた頃に、運命とも呼べるような相手に出会うことができるなんて、そうそうあるものではありません。


ロバートもフランチェスカも、別に軽い火遊びをしようとしたのではありません。

恋をするなんて考えもしなかったし、
お互い責任もある、(といってもロバートは独身ですが)立派な大人です。

それでも、そういう気持ちに抗うことができないくらい惹かれてしまう気持ち・・・
それはもう、許されようが許されまいが、どうしようもないことです。


実話のようなつくりになっていて、フランチェスカの家族が
二人の残した様々なものから、話をまとめた形式です。

惹かれあい、その気持ちをもてあまして苦しみながらも、止められないという
切ない気持ちが、お互いの視点からじっくりと書かれているので、
その想いがものすごく伝わってきます。

まるで自分自身が二人になったような感じでした。


もしかしたら、運命の相手はこれから出会えるのかもしれない・・・
そんな気持ちにさせてくれる、美しくて、切なくて、素敵な物語だと思います。



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