リヴァプールの空

 ジェイムズ・フェネガン作 佐々木信雄訳  求龍堂


あらすじ
第二次世界大戦中、イギリスに住むジェイミーは、空襲を避け安全なカナダへ疎開することを両親に勧められます。
仲が良くなかった同級生トーマス・ブリーカーとその妹エルシーと共に、
カナダへ向かう船ベナレス号へ乗り込むジェイミー。

そこでは快適な船の旅が始まります。
ホームシックと気に喰わないブリーカーのことさえのぞけば、
戦争をどこかでやっているのが嘘のような平穏。

やがて同じく疎開する子供たちとの生活の中で、ジェイミーとブリーカーは少しずつ打ち解けていきますが、
ある夜船はドイツのUボートの攻撃を受けてしまうのでした・・・。



感想
実際にUボートの攻撃を受けて沈没したベナレス号の実話をもとにして書かれた小説です。

戦時下でも子供たちはたくましく、明るい。
そして死ぬということがわかっていません。

ジェレミーは疎開するということを、仲間内から逃げると思われることだと嫌がったり、
戦争体験を冒険だと思っていたりします。

ジェレミーと仲間たちは、毎日毒マスクをつける訓練をやらされたりしながら、
爆弾のかけらを拾って遊んでいるのです。

そしてどこにでもある、転校生であるがゆえに他とちょっと違うブリーカーへの嫌がらせ。

トーマス・ブリーカーは反抗的で乱暴な雰囲気で、おせじにもいい少年とはいいがたいタイプです。
可愛げもなく、船で盗みを働いたりいざこざを起こしたり好き放題です。
ジェレミーも彼に嫌悪感を抱いていたのですが、船で寝食を共にするうちに彼の行動や態度にも慣れてきて、
彼をかばったりするようになります。

そして船が沈没する際に、ジェレミーや妹を守ろうと行動するブリーカーの姿は感動しました。
彼は今までの境遇からひねくれているだけの、普通の不器用な少年なのです。

質素で苦しい疎開生活ではなく、船の上での快適な生活が主で、
戦争とはいえ明るい雰囲気のお話です。
最後の船沈没で波にさらわれる子供たちには胸が痛くなりましたが・・・
たくましく生き抜く子供たちの姿は頼もしいと思いました。

 



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