星の王子様

 サン=テクジュペリ作 内藤濯訳  岩波少年文庫


あらすじ
アフリカの砂漠で、飛行機の修理中に、不思議な少年と出会った主人公、ぼく。

話をするうちに、少年が、とても遠い、とても小さな星からやってきた王子さまであることがわかります。

王子さまは、広い世界を見るために、自分の星を出てきて、今までずっと旅をしていたのです。


今まで見てきた星のことや、自分の星のことを話す王子さま。

子供の王子さまにとっては、大人たちは不思議で不可解に映るようです。


「ぼく」は、今までずっと心を打ち明けられる友人がいなくてさびしかったのですが、王子さまのことを大切に思うようになります。


王子さまには、自分の星を出てきてからも、ずっと気にかけていることがありました。

それは、王子さまの星に咲いた、たった一輪の花のことです。


その花は見たこともない美しい花で、王子さまはその花をとても大切に思っていました。

しかし花は、咲いたそばからわがままを言い始め、王子さまを困らせたのです。

そのため、大切に思ってはいたのですが、だんだんと疲れてしまったのです。

だから王子さまは、花を置いて、星を出てきてしまったのでした・・・。



王子さまは、「ぼく」に言いました。

「ぼくは、あの花のおかげで、いいにおいにつつまれていた。明るい光の中にいた。

だから、ぼくは、どんなことになっても、花から逃げたりしちゃいけなかったんだ。

ずるそうなふるまいはしているけど、根は優しいんだということをくみとらなきゃいけなかったんだ。

だけど、ぼくは、あんまり小さかったから、あの花を愛するってことが、わからなかったんだ」・・・。


地球に来たとき、王子さまはその花が、地球にたくさん咲いているバラの花であることを知り、ショックを受けます。

しかし、その後でキツネと出会い、彼と話すうちに、気づいたのです。


あの花が、たったひとつしかない、特別な花だということに。



そしてキツネは王子さまに、大切な秘密を教えてくれました。


それは、「かんじんなことは目に見えない」というものでした。


そして、こう続けました。

「あんたが、あんたの花をとても大切に思ってるのはね、その花のためにひまつぶししたからだよ。
人間っていうものはこの大切なことを忘れてるんだよ。
だけどあんたは忘れちゃいけない。
めんどうみた相手には、いつまでも責任があるんだ。
まもらなけりゃならないんだよ、バラの花との約束をね・・・」



「ぼく」は、王子さまの話を聞いて、王子さまが自分の星へ帰ろうとしているのだと気づきます。

それは王子さまを好きな「ぼく」にとっては、とても悲しいことでした・・・。



感想
とにかく大好き!!です。何回読んでも、心があったかくなる、優しい気持ちになる、そんなお話です。

みんな誰でも、大切なものがあって、それは他の人には何の意味もないものだけど、自分にとっては何にもかえられない、かけがえのないもの。

それが、王子さまにとっては自分のバラの花で、「ぼく」にとっては王子さまなんですね。


王子さまが、「ぼく」に向けて言う言葉がとても好きです。

キツネが王子さまに贈った言葉と同じように、きらきら輝いて、胸に届くあったかい言葉。

大切なものがあるって、素敵なことなんだな、って心から思います。


また、このお話は、「愛する」ということについても考えさせられる本でもあります。

キツネの言葉、「めんどうみた相手にはいつまでも責任がある」というのは、何だかすごく重い言葉のような気がします。

ただ、自分が好きなときに相手をすればいい、というのではないんだと、

常にまっすぐ向き合わなくちゃいけないんだと、そういうことですね。

愛する、と言うのは簡単ですが、実行するのは難しいなと、本当に思います・・・。


これは新訳も最近よく出ているみたいですが、私はこの訳がとてもお気に入りです。


自分で読んでも幸せな気持ちになれるし、誰かに贈りたくなる、

本当にとっても“大切な”本です。

いつまでも私の宝物ですね。



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