だれも欲しがらなかったテディベア

 アラン・アルバーグ作 井辻朱美訳 ジャネット・アルバーグ画  講談社


あらすじ
そのクマがクマ工場で作られた頃の物語・・・。

クマの性格は(ぬいぐるみにも性格がちゃんとあります)、作られた顔で決まります。

この物語の主人公のクマくんは、不幸にもうっかり、うぬぼれでわがままな性格になってしまいました。


クマくんは可愛げのない顔をしていたために、廃棄処分になりかけますが、すんでのところである女の人に拾われます。

そこから、クマくんの新しい人生(クマ生)がスタートしたのです。


しかし顔が可愛くなかったために、拾われた先でもクマくんは愛されません。
それどころか、クマくんは幾度も危険な目にあい、大切なものを奪われてしまいます。


さらにクマくんの身に再び廃棄処分の危機がせまります。


けれども、クマくんはへこたれません。
うぬぼれや自尊心が高いクマくんは、かなり前向きなのです。

そしてそんなクマくんは、やっぱり運がとても強かったのでした。


やがてクマくんに、大きな転機が訪れます。

その出来事は、自分のことしか考えなかった可愛くないクマくんを、変えることになります。


しかし誰からも愛されないクマくんは、どこまで存在していられるのでしょうか。

そしてクマくんの行く末に希望はあるのでしょうか・・・?



感想
とーっても、かわいいお話です!!

ぬいぐるみの視点が、人間の身勝手さや、無神経さをうきぼりにしていて、
読んでいてちょっと・・・いやかなり、切ない場面もたくさんありました。


ぬいぐるみにとって、人間というのは、恐ろしいものであり、
また、自分の存在価値を唯一確かめられる存在でもある、ということ。


大切にされているぬいぐるみは本当に幸せそうで、
その逆は本当にかわいそうで、
この本を読み終わった後、ぬいぐるみへの愛情がどーっと沸いてきてしまいました・・・。


この物語のクマくんは、可愛くない性格ですが、
読んでいるとどんどん可愛く思えてきて・・・幸せになってほしいのに、なれなくて、もどかしかったです。


この本に登場する人間たちの描写も、とっても深くて、目に浮かぶくらい鮮やかです。
そしてまた、かわいらしいイラストも好きです・・・。

やさしい気持ちになりたいとき、ほっとしたいときにピッタリのお話です。



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