アドヴェント・カレンダー

 ヨースタイン・ゴルデル作 池田香代子訳  NHK出版


あらすじ
町にアドヴェント・カレンダーを買いに出かけたヨアキムとパパ。

そして小さな本屋で、たったひとつしかない手作りのアドヴェント・カレンダーを見つけます。

それは本屋の売り物ではなく、ヨハンネスという花売りが置いていったもののようです。
ヨアキムがそれをほしがると、本屋のおじいさんはタダでくれました。


アドヴェント・カレンダーは、十二月の一日から、クリスマスイブまで毎日めくるカレンダーです。

一枚の大きな絵には二十四個の扉がついていて、それを毎日一つずつめくっていくと、
いろんな絵が扉の中に描かれています。

それを見ながら、クリスマスまでの日を楽しみに待つという、クリスマスのためのカレンダーなのでした。


翌日の十二月一日から、早速ヨアキムはカレンダーを開きます。
すると、扉から、小さな紙切れが落ちてきました。
そしてそこには、物語が書かれていたのです。


物語は、デパートで買い物をしていたエリーサベト・ハンセンという女の子が、
突然動き出した子羊のぬいぐるみを追いかけるというストーリーでした。


そして二日にも、同じように紙切れに物語が。
それは、エリーサベトが子羊を追いかけるストーリーの続きでした。

エリーサベトは天使に会い、一緒に幼子イエスの誕生を祝う旅をすることになります。
もちろん、彼女にとっては何よりも子羊に触りたかっただけなのですが、
子羊もベツレヘムへ行くらしいので、彼女も行くことにしたのです。

二千年の時と場所をさかのぼる、壮大な冒険の始まりです・・・。


ヨアキムは、この不思議な物語にすっかり夢中になります。

どうして、このアドヴェント・カレンダーにこんな物語を入れたりしたのだろう?

入れたのは、多分ヨハンネスという人に違いない。
だけどどうして、そんなことをしたんだろう?


ヨアキムは、この不思議な物語を秘密の箱に入れて、クリスマスに両親へのプレゼントにしようと考えます。

けれども物語が面白くて、つい内容を話してしまいます。
ただ物語を話すだけではなく、その中に出てくる言葉を引用して、何度も両親に披露してしまったのです。

両親は不審がりました。
突然ヨアキムが変なことばかり言い出したからです。


そして、両親は、ヨアキムの秘密の箱を無断で開けてしまいました。
ヨアキムは激怒しますがそのあとで仲直りし、
それからは三人で、アドヴェント・カレンダーの物語を読むことになりました。


パパは、物語に書かれている場所や出来事を調べるのに夢中です。
それが本当にあるとわかると、感心します。

この物語が本当であるはずはありませんが、
ママは、本当かもしれない、と思い始めているようです。

ヨアキムはもちろん、本当のことだと信じています。


クリスマスまでの毎日、三人は毎朝ワクワクしながら
アドヴェント・カレンダーの秘密を楽しみ続けます。


そして、ヨハンネスをクリスマスパーティーに呼ぶことにし、 この物語の謎は、そのとき明かされることになったのでした・・・。



感想
クリスマスにぴったりの本、ではないでしょうか。

実は私も、クリスマスプレゼントにもらったのです。
表紙や、中表紙のつくりも、アドヴェント・カレンダーを思わせ、とても素敵です。


この長い長い物語は、二千年の時をさかのぼって、幼子イエスの誕生を祝うストーリーです。

私はクリスチャンでもなんでもなく、「聖書物語」という本を妹に朗読してもらったら寝てしまったという人間ですが、
そんな私もとても楽しめました。
しかも、全然眠くなりません。(聖書ではないので当然ですが・・・)

時代をさかのぼるというファンタジーの面白さがあり、エリーサベトと一緒に、タイムスリップしているような気分でした。


そしてまた、その物語を読むヨアキムたちがいて、彼らのリアルな世界も、面白いです。

物語の場所や日時をわざわざ調べ上げて感心する、現実思考のパパと、
なんとなく夢見がちな雰囲気のママに囲まれて、ヨアキムは本当に楽しそうです。

アドヴェント・カレンダーを通じて、三人が一つにまとまっていく感じが、
クリスマスらしいほのぼのとした雰囲気を感じさせてくれて、嬉しいです。


ヨハンネスがいったい何者で、
なんのためにこのようなことをしたのか、
というようなことは、クリスマスにわかります。


この本は、私のように、聖書なんて何も知らないという人にオススメの、
クリスマス・ファンタジーです。

この本を読むと、クリスマスがただのイベントの日ではない、特別な日という感じで、
また違った角度でクリスマスを楽しめる気がします。



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