34丁目の奇跡

 ヴァレンタイン・ディヴィス作 片岡しのぶ訳  あすなろ書房


あらすじ
サンタクロースにそっくりな老人、クリス・クリングルは、自分自身「私はサンタクロースです」と言うのが口癖でした。

そのせいで、サンタを信じない人々が管理する老人ホームから追い出されることになってしまいます。

しかしクリスはめげません。
なぜなら、自分はサンタクロースだという自信があるからです。


その風貌がサンタクロースそのものであることから、パレードのサンタクロース役に抜擢され、
サンタクロースとしておもちゃ屋で働くことになったクリス。

クリスと接しているうちに、生真面目で男性を信じられなくなったドリスや、
その娘で現実的すぎて可愛げがないスーザンも少しずつ変わっていきます。

そしてクリスのおかげで、クリスマスを前にたくさんの人たちが幸せな気持ちになれたのです。


ところが、クリスがサンタクロースを偽っているということで問題が深刻化し、
ついに裁判沙汰になってしまったのでした・・・。



感想
「私はサンタクロースです」と言う、サンタクロースそっくりの老人、クリス。

しかしサンタだと言う割に、普通の老人のように老人ホームに入っていたり、
おもちゃ売場で子供たちのほしいものを尋ね、別のおもちゃ屋を紹介したりするなど、
まったく普通の人間のおじいさんにしか見えません。


しかも最終的に裁判沙汰になり、クリスは精神病院に入れられてしまいます。

サンタと聞いて誰もが想像する、空飛ぶソリやトナカイでプレゼントを配る・・・そんなシーンは全く登場しないのです。


サンタになりきっている、ちょっと頭のおかしいおじいさん。
そう思われているクリスですが、もしかしたらそうなのかも、と思ってしまうほど、そういう意味でサンタらしくない。


しかし、サンタとしてのプライドから、自分がサンタ役をやらされることに不満を持ったり、
サンタを馬鹿にされることがどうしても許せなかったり、
子供たちだけでなく、大人たちもみんな幸せにしようと思っていたりするクリス。

たとえサンタになりきっているだけとしても、お茶目で、あったかくて、人のいいおじいさんです。
読んでいると、どんどんクリスが好きになってきます。


そして迎えたエンディングで待っていた、驚きと喜び・・。
読み終わると心があたたかくなってくるような、素敵なお話です。



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