エディスの真実

 エディス・フェルマンス作 樋口真理訳  講談社


あらすじ
第二次世界大戦中のドイツ支配下のオランダで、潜伏生活を送った少女エディス。
彼女もまた、アンネ・フランク同様、潜伏前日記を書いていました。

そして潜伏中には、家族からのたくさんの手紙を受け取りました。
戦後エディスは、自分の身に起こった様々な出来事を本にしました。
それがこの本です。


エディスは、オランダに住む少女でした。
優しい父、母と、二人の兄フースとユールス、そして祖母に囲まれ、幸せな少女時代をすごします。
彼女の周りにはたくさんの友達がいました。

しかし、ドイツがオランダを支配下に置いたとき、彼女は自分を「ユダヤ人」だと強く認識せざるを得なくなります。
また、友達の中にも、ユダヤ人と非ユダヤ人がいることがわかります。

体の弱かった上の兄フースが、一人安全なアメリカへ渡り、エディス達はオランダで、戦争の終結を待ちました。
しかしいよいよ危険が迫った1942年の夏、エディスと下の兄ユールスも潜伏することになってしまいます。

入院中の母、同じく病気の父、そして祖母をおいて。

行動的なユールスは自活しながら隠れ住み、最終的にイギリスに渡る計画があり、 エディスは匿ってくれる家で、偽名を使って生活することになったのです。


エディスの恋人アドリーを連絡役に、エディスはジューク夫妻の家で「ネッティ(偽名)」として
暮らし始めました。

しかし他人の家での緊張する日々、そしてそれ以上にアドリーから届けられる家族の手紙は、エディスを深く苦しめました。


父も母も祖母も(そしてそのほかのユダヤ人も)、ドイツ人の手にゆだねられています。
そして、病気で苦しむ父や母のお見舞いすらも行けず、また、手紙ですら父母と呼びかけられもせず、
ただの知り合いのように接するしかできないのです。

泣くこともわがままを言うことも許されません。

たとえ、家族の身に何が起ころうとも。

そんな日々を必死に耐え抜き、やがて戦争が終わったときエディスは、奇跡的な再会を果たします。
そしてそれから、彼女は自分の道を探し始めます・・。



感想
大体の流れはこのような感じですが、本では、「日記」とその頃の状況説明、その後は
長い潜伏生活の間たくさん送られてきた、父や母からの手紙が紹介されています。

一人称(「わたし」)で書かれているため、感情移入しやすい文体です。


私がこの物語を読んで思うのは、確かに深い絶望だらけなのですが、
両親から届く、愛に満ち溢れた手紙はなんて素晴らしいのだろう、ということです。

自分が苦しくてたまらないときに、それでも遠く離れた娘を精一杯元気付けようとして書かれたたくさんの手紙。
その手紙の一つ一つが、本当に心に染み入ります。

そしてまさにそれだけが、エディスの心の支えになるのです。

エディスもまた、両親に手紙を書きます。
お父さんともお母さんともかけませんが、それでもエディスが心からの励ましを贈ることで、
二人とも生きる希望がわいてくるのだと思います。


そしてオランダ人でありながら、ユダヤ人のエディスをかくまい続けたジューク夫妻は本当に素晴らしい、と思います。

戦後、夫人は「わたしの立場にあったら、だれでも同じことをしたでしょう。品位のある人なら、だれでも」と答えていますが、
当時それをできた人はなかなかいなかったでしょう。

エディスが彼らに助けられたのは、本当に幸運です。
読み終わったとき、アンネ・フランクとはまた違う感動でいっぱいでした。



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