アンネの日記(完全版)

 アンネ・フランク  深町眞理子訳  文藝春秋


あらすじ
ユダヤ人の少女アンネが、十三歳の誕生日から、ナチスに捕まるまでの二年間を書き綴った日記。

ユダヤ人たちの生活や、潜伏生活について・・・彼女の目を通して様々な日常が書かれています。



感想
第二次世界大戦のヒトラーといえば、有名なユダヤ人虐殺。

私は日本人なので、もしこの時代に生きていたらドイツとは同盟国家。

きっとユダヤ人に対しても、言われるままの感情しかわかなかったでしょう。

今だから、ヒトラーを憎み、ユダヤ人をかわいそうだと思えるんだと思うと、

かなり複雑な気持ちになります。


有名なアンネ・フランクの日記。

読みたいと思ったときから大分時が経ってから、読むことができました。


日記というと、なんとなく独りよがりで読みにくいような印象を受けますが、アンネの日記はすごくわかりやすいと思います。

それはアンネが13歳という年齢のわりに大人びていることと、この日記が、架空の友達“キティー”にあてたものだから、ですね。

友達に状況をわかりやすく説明するために、かなり感情を抑えて客観的に書かれています。


これを読むと、まず、アンネはなんて魅力的な女の子なんだろうと思います。

ユダヤ人であるために、ドイツによる様々な差別はありますが、友達にも好かれてモテモテで、家族にも愛されて・・・。

でも、そんな日々は突然終わってしまうのです。


姉のマルゴーが“呼び出し状”を送られ、強制収容所へ連れて行かれることになってしまい、それを拒否した一家は、隠れ家へ移動します。

隠れ家の生活が、この日記のほとんどですが、それはとても息苦しく、重苦しく、辛い毎日です。


いつこの場所が見つかって、ナチスに連行されるかもしれない。

(連行されれば、強制収容所行きで、ほぼ死が待っています)

いつこの場所に砲弾が降ってこないともしれない。

(それでも、避難することができないのです)

・・・そんな恐怖と毎日闘って生きていくこと。

それは地獄とも言えます。


それなのに、そんな辛い毎日の中、アンネはほとんど日記に泣き言を書いていないのです。


少女らしく、両親への不満や自分自身の悩みなどもたくさん書いていますが、何度も何度も出てくる言葉は、「いつかこの場所を出られたら」という、未来への夢です。


それは、架空の友達に弱音ばかりを吐いていられない、という強がりなのかもしれませんし、
記すことで、それを現実にしたいという切望なのかもしれません。


でも、だからこそ、アンネの日記を読むととても勇気づけられる気がします。

そしてアンネ自身も、自分で書いた日記に、おそらく何度も励まされたでしょう。


苦しいことだらけの隠れ家生活で、私が好きな部分はアンネの恋です。

そこだけがキラキラ輝いて、とても幸せそうで・・・

こんな状況の中でも、人は幸せを見つけられるんだな、と強く思います。


日記は、隠れ家がナチスに見つかる三日前で終わっています。

もし、強制収容所にも日記を持っていけていたら、

アンネは何を書いたのでしょうか。


地獄のような場所でもきっと、希望を信じて夢を書いていたんじゃないか・・・

そんな風に思います。



HOMEへ  図書室へ  実話目次へ